出 版 社: ほるぷ出版 著 者: ホリー・ブラック 翻 訳 者: 千葉茂樹 発 行 年: 2016年06月 |
< 最後のゲーム 紹介と感想>
子ども時代の終わりについて、どこかで明確な線が引けるか、というとそうでもないのかと思います。とはいえキッカケやトリガーはあるかも知れない。ザックの場合、大切にしていた人形を父親に捨てられてしまったことが、そのキッカケになるはずでした。これでポピーとアリスという二人の女の子と続けてきた『ゲーム』ができなくなる。『ゲーム』はただの人形遊びではなく、人形のキャラクターを掘り下げて、物語を自分たちで作っていくものでした。海賊人形のウィリアム・ザ・ブレイド。GIジョー人形のレディ・ジェイ。そして陶器製のボーンチャイナのクィーン。三人で作り上げてきたキャラクターたちの冒険を語り、その背景や心理を想像し物語を展開させる。ザックは十二歳にもなって、女の子たちとこんな遊びをしていることにどこか恥ずかしさを感じながらも、このゲームの楽しさに浸っていました。そこで突然、海賊人形を捨てられてしまったわけです。理由を告げずにもうゲームはできないという宣言をザックが二人の女の子にしたのは何故だったのか。ここに思春期の複雑な心理や三人の微妙な関係性が作用していきます。人形遊びの世界から離れる時期にきていた三人には、それぞれ抱いている思いがあります。しかし、ゲームを卒業して少年たちとの世界に入ったザックは、再びポピーとアリスに呼び出されます。そして、ポピーの家の人形であるクィーンの様子がおかしいことを告げられるのです。クィーンは女の子の遺骨を材料に作られた人形であり、ちゃんと埋葬しなければならない。『ゲーム』はまだ終わらず、さらには現実で冒険しなければならないという延長戦がここに始まります。子ども同士の関係性が、それぞれの成長によってシフトする時期の面映さを描いた児童文学であり、ホラー的な要素も持った物語です。ニューベリー賞オナー受賞作。