もちろん返事をまってます

Letters for the other child.

出 版 社: 岩崎書店

著     者: ガリア・ロンフェデル・アミット

翻 訳 者: 母袋夏生

発 行 年: 1999年07月


もちろん返事をまってます  紹介と感想 >
エルサレムに住む小学五年生の女の子ノアは、先生から誘われて、同じ町に住む同い年の少年ドゥディと文通をはじめます。文通相手は「問題を抱えた子」であると先生は言っていましたが、ボランティア精神があると自負するノアは、実に積極的態度で臨んでいきます。そのあたりの事情を包み隠さず書いてきたノアの手紙を読んで、さて、ドゥディはどう思ったか。脳性マヒのために車いすで生活しているドゥディ。ワープロで返事を書いているのも、ペンを握ることが難しいからです。初手から自分の写真を送りつけてくる「かわいい」ノアに対して、かなり引いてしまっているドゥディ。一方、ノアは写真を送ってくれないドゥディに腹を立てたりもします。ノアは、自分の姿を見られたくないというドゥディの気持ちを理解できず、色々な質問をぶつけていきます。 それに正直に答えるドゥディとのやり取りの中で、次第に、ノアも彼の置かれている立場がわかってくるのです。ともかく、この二人のやりとりが、真正面からのノーガードな気持ちの応酬で、実に潔いのです。二人の心の距離は次第に近づいていきます。二人は手紙の終わりにいつも、すぐに返事をください、と書き添えます。この素直さも素敵です。人は自分の気持ちを率直に表現しても、かならずしも受け入れられるわけではない、ということを経験的に知っているため、本当の気持ちを語ることに臆病になりがちです。期待しても、裏切られることは多いし、傷つけられることだってあるからです。だから、あらかじめ拗ねた態度をとることも多いし、言外や余白にあるものの方が雄弁なこともありますね。だからこそ、この二人の素直さや正直さは貴いのかも知れません。文通で大切なことは、返事が欲しい相手に、ちゃんと「返事をまっています」と書くこと。当たり前のようで、難しいことだと思います。気持ちが繋がっていく二人は会いたいと思いながら、ドゥディの心の壁はまだ頑強です。それを突き崩すのはノアの熱意です。なにせ郵便を使わずに直接、ドゥディの家のポストに投函に行ってしまうなど、積極的、を通り越して、やや怖いところもあるノアなのです。さて、ドゥディは、どんな顔をして、ノアとの初対面を迎えたのか。恋愛未満の親愛の情が、なんとも面映い物語です。