出 版 社: KADOKAWA 著 者: E.D.ベイカー 翻 訳 者: 務台夏子 発 行 年: 2004年05月 |
< カエルになったお姫様 紹介と感想 >
とにかく楽しい女の子の冒険の物語です。おとなしく王子様を待っているより、雄々しく、逞しく、自分で道を切り開くタイプのお姫様のお話。『あいにく女の子というものは、王女に生れてついたからって自動的に優雅になったり、自信がもてたりするわけじゃない。わたしは十四年間ほとんどずっと、この事実を嘆き続けてきた』という、エマは、プリンセスなんだけれど、実に不器用で、王女としての心得もなかなか頭に入らない。召使と遊んだり、どろ沼に遊びにいったりもするし、隣国の王子様と結婚して王妃におさまるよりも、唯一、自分の不器用さを冷やかさない美しいグラシナ叔母様のような魔法使いになりたいと思っている、そんな十四歳。それなのに、お母様ときたら、あのいけすかないジョルジュ王子を自分と結婚させようとたくらんでいる。どうにか、そんな運命から逃れられないかな、と思いながら、ジョルジュ王子と顔を合わせないように逃げ込んだ沼地で、顔を合わせてしまったのは、一匹のしゃべるカエル。このカエル、こともあろうに、自分は魔法で姿を変えられてしまった王子様で、王女にキスしてもらえたら元の姿に戻れる、なんて古典的な台詞を言い出すのです。ぬめっとしてそうで、気持ち悪い、ということで、一旦は却下したものの、さてエマ王女にも、ちょっと興味をひかれるところがあって、後日、再び、カエルを訪ねることとなります。エドリック王子を名乗る、このカエル、なんと光栄にも、エマのファーストキスを賜ることになるのだけれど、果たして、カエルは王子様の姿に・・・と思いきや、もとのカエルのまま。逆に、王女様も、カエルになってしまったのです。あららら。
カエルの生活は辛い。無論、元王女でなくとも辛いものです。主食はハエだし。ハエなんて絶対、食べるもんですか、と言っていたエマ王女、あらためカエルのエマに、カエル生活の指導を始めたのは、元エドリック王子こと、やはりカエル。まあ、なんとか、カエル暮らしの生活と知恵が身についたところで、このルールどおりに魔法がとけなかった謎をどう解くべきかと、二人、もとい、二匹は考えます。自分に魔法をかけた魔法使いにルール違反を直訴しよう、ということで、二人で、魔法使いを探して歩くのだけれど、とんだ人違いをして、窮地に陥ることになる。絶対絶命の二匹は、果たして、逃げ延びることはできるのか、そして、無事、人間の姿に戻ることはできるのか。王女としては、半人前だけれど、カエルとしては、最大限の知恵と行動力を発揮して、窮地を切り抜けていくエマ。エドリックも、なんとかエマについていくという感じ。まあ、最期には、ちょっとした勇気を発揮して、エマのハートを掴むこともできたかなあ、というところだけれど、これも読んでのお楽しみです。捕食動物との戦いや、魔法使いや妖精とのかけひき、カエルになったエマが、経験するハラハラ、ドキドキの冒険は、スリルに溢れていて面白いのですよ。
王女様が、王子様に救われてハッピーエンドとはならない、新しいタイプのプリンセスストーリーが増えていますが、これもそんな一作。エマと一緒なら、カエルのままでもいいかな、なんて思うエドリックも、もうひとつしゃんとしていない王子様なんだけれど、なかなかこれで魅力があるのです。次回作があるそうで、そこでは活躍するらしいのだけれど。まあ、王子様がお姫様に助けられる話があってもいいじゃない、ということで、きっと、読んだ人は、みんなエマが好きになる。幸せなおとぎ話なのです。