Mobile library.
出 版 社: 早川書房 著 者: デイビット・ホワイトハウス 翻 訳 者: 堀川志野舞 発 行 年: 2017年05月 |
< 図書館は逃走中 紹介と感想 >
いわゆる「疑似家族」の物語です。シングルマザーとやや知的な障がいのある娘。母親がいなくなり、父親に虐待されている少年。自分の正義のために上官を殴り、逃走中の青年。不思議な縁で結ばれた彼らが「移動図書館」に乗って世の中から逃げる、というのは上っ面のストーリーで、その深淵はこの物語全体を貫くセンスや軽妙な感覚にあるのかなと。この物語のウィットはダークだけれど、不思議と愛おしさに溢れています。また「疑似家族」モノのご多分にもれず、家族というものの本質を考えさせるところもあります。この「移動図書館」から、主人公の少年、ボビーは色々な本を借りて読んでいきます。登場する本はベーシックな名作ばかりですが、本編の進行とも絡み「少年が本と出会う時」の感覚に遭遇できるので、これもまた読者小説としても楽しめる一冊だと思います。