出 版 社: 偕成社 著 者: 石田としこ 発 行 年: 1992年04月 |
< 魔女見習い通信 紹介と感想>
親友同士の女の子の手紙のやりとりで構成されている物語です。ともかく明るく陽気でそこに陰りはないのですが、語られている内容はわりと深刻です。まゆは、学校の500m走の校内選抜レースで走っている最中に足がもつれて転んでしまい、そこから股関節に異常があったことが発覚します。この夏休みに入院して手術を受けることになったものの、遊びたいざかりの12歳の小学生としては入院生活が退屈でなりません。そんな無聊を手紙にこめて、親友のミィに書き送ります。ミィもまた、まゆのいない夏休みをどう過ごしているか、エピソードを書き送ります。もう一人の親友エッコとともに「魔女トリオ」と名乗る三人。とはいえ、落第した「魔女見習い」という自覚もあります。まゆの校内選抜レースでの対抗馬の1組の木村さんが転ぶようにと願いをかけて、こんなことになってしまったことの自虐です。とはいえ、スピリットは魔女。魔女たるものとして、へこたれてはいられないのです。まゆからいたって明るく語られる入院生活ですが、これがなかなか大変な様子です。無事、手術は成功したものの片足に20キロの重りをつけさせられ、車椅子生活の後は、コルセットをつけて歩行練習とリハビリが続きます。医者には向こう一年は体育は見学、原則歩かないことと言われるし、走るなんてもってのほか。さすがに凹むまゆをミィは叱咤激励します。そんな友情に支えられて、長い入院生活から学校に復帰しようとする、まゆ。その手には魔法の杖(松葉杖)が二本もあるんだと、魔女になぞらえて、自分を励ましていく前向きな姿があります。この物語、ほとんど描かれない、まゆの両親や先生など、周囲の大人の思いを考えていくと、また複雑な味わいがあります。ともかくも、女の子たちの友情が一切、陰りなく捕らえられた稀有な書簡モノです。