ルーム・ルーム

The turnabout shop.

出 版 社: 金の星社

著     者: コルビー・ロドースキー

翻 訳 者: 金原瑞人

発 行 年: 2000年12月


ルーム・ルーム  紹介と感想 >
母親のアルシーアが亡くなったために、小学五年生のリビィはニューヨークを離れ、ボルチモアに引き取られることになりました。アルシーアの遺言は、大学時代のルームメイトだったジェシー・バーンズにリビィを託すというもの。特に親友というわけではなかったアルシーアとジェシー。自由奔放な性格で、大学も中退し、シングルマザーになったアルシーアと、大人しく地味なジェシーは正反対なタイプです。ジェシーのことなど、一言も聞いたことがなかったリビィは戸惑います。それはおそらくリビィを託されたジェシーも同じだったかも知れません。しかし、ジェシーはすぐに覚悟を決めたのです。好きだった機(ルーム)を置いていた部屋(ルーム)を片付けて、リビィを迎え入れたジェシー。一方で、リビィは新しい環境に素直に馴染めません。リビィはジェシーの払った犠牲が解せないのです。どうして自分の好きなものをどこかにやってまで、見ず知らずの子どもを預かろうと思うのか。「機(ルーム)は機(ルーム)でしかない。でも子どもは最高(クール)だろ」なんて、他の人に言われても、俄かにはリビィも信じられないのです。そんな二人が少しずつ心の距離を近づけていくのが、この物語です。前提として、母親を失ったことを受け入れられないリビィがいます。母親がいなくなってからの日数を毎日数えているリビィ。新しい日常に慣れていくことで、いつか、そんなことをしなくなるものです。とはいえ、心が回復するには相応の時間が必要で、彷徨することもあります。それもまた失われた人への愛情の発露。人は次のステージに進んでいくものであるがゆえに、ここにつなぎとめられたものの貴さを思います。