大好き!クサイさん

Mr Sink.

出 版 社: 評論社

著     者: デイヴィッド・ウォリアムズ

翻 訳 者: 久山太市

発 行 年: 2015年10月


大好き!クサイさん 紹介と感想>
十二歳の女の子がお母さんに内緒でやってはいけないこと。そのダントツの一位は、「ホームレスを自分の家の物置に住まわせること」です。クロエがどうしてそんなことをしたかと言えば、お母さんが、すべての路上生活者を町から追い出すことを公約に選挙に立候補したからです。なぜ、追い出したいのか。それは「クサイから」です。ホームレスのクサイさんは、その名の通り、強烈な臭いを発している人でした。クサイさんと友だちになったクロエは、クサイさんをかくまおうとしていました。太っていることがコンプレックスで、学校でも友だちができず、さびしい思いをしていたクロエは、いつもベンチに飼い犬と一緒に座っているクサイさんに声をかけていました。意外にも紳士で、物腰も上品なクサイさんと話をするうちに、次第にクロエはクサイさんを好きになっていきます。クサイさんを政治的に利用しようとする、政治家の企みがあったりと、事件も色々と起きます。そんな中、クロエはクサイさんの悲しい過去を知ってしまいます。クサイさんのおかげで、バラバラだったクロエの家族が再生していくハッピーな物語ですが、どこか哀感とペーソスもあります。クサイさんの抱えた哀しみを、クロエの純粋な心が感じとっていくあたりもいいんですね。ロアルド・ダールみたいな感じの作品ですが、やはりロアルド・ダール賞の候補作だったようです。クロエのお父さんは自動車修理工になる前はロックミュージシャンだったのですが、そのバンド名が「破滅の毒ヘビ」だったりと、変なセンスがいちいち光る楽しい作品です。