出 版 社: フレーベル館 著 者: サラ・ウィークス ギーター・ヴァラダラージャン 翻 訳 者: 久保陽子 発 行 年: 2018年10月 |
< 明日のランチはきみと 紹介と感想 >
IT企業で働いているお父さんの仕事の都合で、インドからアメリカに転校してきた少年、ラビ。インドでは大きな家に住み、使用人もいた暮らしから一転して家族だけの生活。変わったのはそれだけではありません。インドの学校では優秀な生徒としてもてはやされ、クラスの中心にいた自分が、ここアメリカでは、イントネーションのせいで、ろくに英語も話せない変な子としてしか扱われないのです。自分が自信を持っていたことが、ことごとく打ち砕かれ、しまいには、いじめっ子に「カレー頭」なんて変なあだ名を付けられ、なじられる。少年のちょっと頑なだったプライドがスクラップされて、そこからのビルドが見どころの作品です。人間が本来、何に自信を持つべきか。ラビの視点と、元からクラスにいた、いじめられっ子、ジョーの視点が交互にクラスの情景をうつしとっていくあたりに面白さもあります。思いこみは、たいてい間違っている。先入観を覆して、視野を広げた少年たちが、新しい世界と、真の友情を獲得していく物語です。いじめっ子の少年が、ベタな悪役のままで、その心のうちにアプローチするところがなかったのが残念なところ。そして、給食の描写が実に巧く、なんとも美味しくなさそうに描かれています。そんな給食であっても、一緒に食べたいと思える仲間ができたことの喜びは大きい。僕は食事の美味しさも人間の情操教育を担っていると思うのだけれど、アメリカの実情はどうなんでしょうね。