ノエル先生としあわせのクーポン

Monsleur Noe¨l.

出 版 社: 講談社

著     者: シュジー・モルゲンステルン

翻 訳 者: 宮坂宏美   佐藤美奈子

発 行 年: 2009年06月


ノエル先生としあわせのクーポン  紹と感想 >
文字も大きいし、ページ数も少なく、それこそ中学年向けというような体栽の本ですが、考えさせられることは多く、実に深い作品です。要は、なんだかすごく「自由すぎる」人物が教室に先生としてやってきてしまった、という状況なのです。独創的な教育方法で教室運営をするノエル先生が、生徒に配った各種のクーポン。それは「学校をさぼっていい券」や「遅刻してもいい券」など、なんでもやっていい許可状でありながら、それをクーポン券として回数限定することで、逆に抑止力を持っています。これは、ある意味、教育的効果があるなとは思うのだけれど、ある生徒が「授業中に踊ってもいい券」を使えば、ノエル先生だってジルバを踊ってみたりして、どこまで本気なのか良くわからない人なんですね。先生なのに校長先生に叱られるのを子どもみたいに嫌がったりする(まあ、大人だってそういうものだけれど)。真理を悟っているのか、ただのデタラメな人なのか正体不明なのです。校長先生はともかく、生徒の中にも頑な子はいて、ノエル先生の「自由」さについていけなくなります。ノエル先生は、わりとグッサリと人の心に突き刺さる、穿ったことを言う。もしかすると、それはごくあたり前のことなのかも知れない。楽しくやろう、ということがすべての中心にあってもいいはず、なんだけれど、人はあえて苦行を選択して、人生をつまらなくしているかも知れない。人間はもっと本質的に自由なのではないのか、なんて自問してしまったりして。ともかく、考えるべきことの多い作品なのです。うーむ。