おしゃべりな口

ロウィーナの転校日記
Blabber mouth.

出 版 社: 岩波書店

著     者: モーリス・グライツマン

翻 訳 者: 青海恵子

発 行 年: 1997年07月


おしゃべりな口  紹介と感想 >
笑って、泣いて、切なくなって、たまらなく幸福な気持ちになれるそんな作品です。読み終えてから、もうニコニコがとまらない。児童文学ではありますが、今、心に檻を抱えて辛い思いをしている人に、少しでも微笑みを作ることができるのなら、どんな年齢の方にも、この作品を勧めたいと思いました。ロウィーナとともに過ごす200ページ、これは得がたい物語の時間です。

転校生のロウィーナが、転校初日、クラスメートに配ったのは、一枚の手紙。『こんにちは。もう気づいたと思いますが、わたしは口がきけません。でも心配はいりません。ちゃんと友だちになれますから。口がきけないのは、生まれてくるときに、喉のちょっとした部品をつけ忘れてきたからです(だから、だいじょうぶ、秘密はけっしてもらさない)・・・』精一杯の笑顔でがんばるロウィーナ。だけれど、意地悪な子どもたちはいるもの。初日からトラブルの連続。そして、ロウィーナが一番、心配しているのは、愛すべき「パパ」の登場なのです。ロウィーナのパパときたら、桁外れの明るさで、調子っぱずれ、変な格好、どこでも歌いだす。まあ、どうにも恥ずかしい人。ロウィーナのことを誰よりも、大事に大事にしていて、愛してくれているのだけれど、こんなパパだから・・・。でも、ロウィーナの悲しみは、無邪気なパパが恥ずかしいのじゃなくて、周囲の無理解にパパ自身が傷ついてしまうこと。そんな、父と娘の、楽しくて、切なさに胸の痛くなるようなドタバタの日々が、もう最高のキレ味の訳文で、クールにキマっています。

「障がい」という重いものを感じさせないロウィーナですが、「友情」と思ったものが「同情」だったりして、深く胸を痛めることもあります。それでも、心の明るさを失わない。「特別な子ども」だなんて意識させない。彼女の元気と、パパの無邪気と、そして、まあ、色々なドラマがあります。ともかく、少しでも、寂しい気持ちの人がいたら、是非、この本を読んで、元気を出して欲しい、そう願わずにはいられない本です。多く人と幸せを分かち合いたくなります。誰かの心の重荷が、少しでも軽くなれば、と、そう思うのです。もう最高!!。