青いイルカの島

Island of the blue dolphins.

出 版 社: 理論社 

著     者: スコット・オデル

翻 訳 者: 藤原英司

発 行 年: 2004年07月


青いイルカの島  紹介と感想 >
この作品、「漂流した少女」のお話だと思っていたのですが、「とり残された少女」のお話だったのですね。1961年のニューベリー受賞作、日本でも66年に発行されて、久しく絶版となっていたようですが、昨年、再版されました。実話をもとに構成された物語で、映画化もされたとか。大いなる自然と、一人の少女の冒険的生活を描く物語。ちょっと映像でも見てみたい気もしますね。

19世紀初頭。アメリカ西海岸には、まだ白人たちに「発見されていない」ネイティブたちの住む島がありました。その中のひとつ『青いイルカの島』と原住民たちが呼び習わすこの島では、小さな部族が、狩猟採集による原始的な生活を送っていました。時に、酋長の娘、カラーナは十二歳。島に大いなる災いをもたらしたのは、ラッコの狩猟にやってきたアリュート人たち。彼らとの取引のトラブルから、島の部族との一大抗争が起き、戦士であった壮年の男たちはほぼ全滅。残されたのは、老人と女、子どもたち。このままでは部族の存亡の危機に関わると、新しく酋長になった男キムキは、島を出て東の国に救いを求めることを提案します。一人、カヌーに乗り危険な航海の末、東の国の白人たちに渡りをつけ、大きな船で部族民たちを迎えにきたキムキ。部族民の移住が果たされようとした、その日、カラーナは、弟のラーモがいないことに気がつきます。ラーモを探しているうちに船は出発してしまい、この島にとり残されてしまった二人。とはいえ、もともと、この原始的生活の島で暮らしていた住人である二人は、特に苦もなく、強靭な生活力を発揮して行きます。再び、船が迎えにきてくれるのを待ちながら。しかし、人間がいなくなってしまったこの島では、かつて飼い犬であった野犬たちが、徒党を組み勢力を伸ばしはじめていました。弟のラーモは、あえなく、犬たちの牙にかかり命を失ってしまいます。この島で、たった一人きりになってしまったカラーナ。それから、18年後、白人の船に「発見」され、この島から連れ出されるまで、彼女のひとりぼっちの生活は続いたのです。

カラーナは、自分の身を守り、生活の糧を得るため、本来ならば、部族の女たちがやらなかったことを行います。まずは、野犬の脅威から身を守るための武器作り。そして、狩猟のための道具作り。部族では女性には禁忌とされていたことを、一人がゆえにやっていかなければなりません。男たちの仕事を思い出しながら、弓矢や、魚を突く銛を作ります。身を守る場所を確保し、犬たちと戦い、魚や貝をとって暮らす。孤独だからといって、沈むこともなく、毅然として生き抜いていきます。やがて、犬たちの中のリーダーを手なずけ飼い犬として、むしろ、楽しく日々を生きていくようになるのです。生活に関わる一切、食物の確保から、自分の衣料を編むことも、自給自足でまかなう毎日。犬や鳥やラッコを手なずけ、友達としたり、時には大ダコとの危険に満ちた戦いを演じたり、たくましく、一人で彼女は日々を送っていくのでした。自然の中で屈することなく、厳しい環境の中で、糧と友を得て、身心を充たし、18年間をひとりで生き抜いた女性の、実に、雄々しくも勇壮な生活力と、そのはじけるような生命力に、思わず感嘆してしまう物語なのです。

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