青い図書カード

The library card.

出 版 社: 偕成社

著     者: ジェリー・スピネッリ

翻 訳 者: 菊島伊久栄

発 行 年: 1999年10月


青い図書カード  紹介と感想 >
図書カード、といっても、この物語に登場するのは、書店で使用する購入用のプリペイドカードではなく、図書館で本を借りるためのものです。どちらにしても、どんな本でも手にすることができる可能性を孕んでいるのが図書カードというものです。偶然、その青い図書カードを手に入れてしまった子どもたちは、導かれるように図書館に行き、本にまつわる特別な体験をします。図書館を舞台にした、ちょっと不思議な物語。かといって、ファンタジーというわけでもない。本と出会う「奇跡」は誰にでも起こりうるものです。不思議な青い図書カードを手にした四人の子どもたちのオムニバス。それぞれリアルとファンタジーのブレンド具合も違いますが、いずれも味のある人間の関係性を描いた作品になっています。友人と二人、ワルになって学校をドロップアウトしようとしていた少年マングースが、偶然、手に入れた図書カードで図書館から借りたのは『不思議あれこれ』という動物や昆虫についての読み物でした。マングースはこの本に夢中になってしまい、壁にスプレーで、動物や昆虫のマメ知識を落書きするようになります。もはやワルであることよりも、その本の世界の方が大切になっているマングース。そんな彼をワルである友人のウイーゼルが理解できないまま見つめています。友人が変わっていき、置いていかれてしまう思春期の焦燥感もまた良し。他にも、テレビ依存症の女の子や、ほとんど記憶のない母親の面影を求める少年や、マッシュルーム農場に暮らすマッシュルーム嫌いの女の子のお話が続きますが、いずれも青い図書カードがトリガーとなって、物語が動き始めます。どの作品も繊細な心の機微が描かれ、グッとつき刺さってくる物語ばかりです。