コブタのしたこと

Big.

出 版 社: あすなろ書房

著     者: ミレイユ・ヘウス

翻 訳 者: 野坂悦子

発 行 年: 2010年02月


コブタのしたこと  紹介と感想 >
非常に重い作品です。とはいえ、書誌データベースの紹介文にあるような『平和な村で起きた信じられない事件。障害のあるおとなしい少女リジーは、なぜ「コブタ」に利用され、犯罪に加担することになったのか? 少女の心の闇に迫る衝撃作。』という内容紹介は、ややあおりすぎじゃないかなと思っています。「とくべつがっこう」に通っている少女、リジー(ディジー)は、いつも近所の子どもたちからからかわれたり、無視されたりしている子です。普通の子どもたちよりも動作がゆっくりで、感じやすく、その心の中は、いつもぐるぐるしているからなのです。ある日、ディジーはコブタと名乗る太った少女と親しくなります。最近、この辺に越してきた彼女は、転校を繰り返しているらしく、ちょっと問題がある子のようです。これまで友だちのいなかったディジーは、気が強いコブタに強引にひっぱられていくようになります。怒れる少女であるコブタは、いつも憤る心をもてあましていて、その鬱憤をぶつける矛先を見つけようとしていました。ディジーの復讐を勝手に目論むコブタは、一体、何をしてしまったのか。大人しい女の子が、やや勝手な「友だち」に引きずられていく物語、ということで、アン・ファインの『チューリップタッチ』が想起させられました。「支配と隷属の友人関係」が行き着くところに、大きな事件が起きるのも一緒です。こちらの作品の方が、主人公を起点として、彼女がコブタを「断ち切る」こと自体に重みがあるかも知れず、そこが、苦い成長の物語となっていたかとも思います。たた問題児を問題にするだけではなく、問題児の抱えている問題について、もっと考えるべきではないか、という論点も出てきます。問題児に向けるまなざしは『チューリップタッチ』の方があったかな。ともかく、考えるべき点は多いかと思います。オランダ版『チューリップ・タッチ』という感じですが、比べて読んでみると面白いかも知れません。